おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

 

書きたいと思った時

 

身体のどこからかそれが溢れ出して、目の前の紙や画面に流れ込んでいく時と

その思いがグルグルと身体の中で渦巻くだけで、全く出てきてくれない時がある。

 

前者は良い。するすると体から抜け出た思いや世界が形を作り目の前に現れてくる様は本当に気分が良い。

スッキリもするし、達成感もある。また、こんな風に書いてみたいといいサイクルが生まれたりもする。

最高の状態だ。

 

問題は後者。

ぼんやりとした何かが身体の中を巡っているのはなんだか気持ち悪い。上手いこと形にしてあげたいが中々掴めなくてなんだか申し訳ないような気もしてくる。

 

私の中にいるそれらは基本、外に出たがっている。

形を得て、生きたがっているのだ。

 

だから私も然るべき形を見つけてあげたいと思う。

 

けれども見つからないことがあるのだ。

どんなに悩んでも、どんなに苦しんでも、外には出せなかったもの達も沢山いる。

 

それはきっと私がまだまだ未熟である証であろう。

 

私の中にそれらを表現する明確な形がないからそれらを形にできないのだ。

知らない感情。知らない表現。知らない世界。

 

 

身体の中に巡るだけの何かが駆け巡るとき。

私はたいへん苦しむ。なにせどんなに考えても想像してもそれらは形をなせないのだから。

少しずつ薄れて消えてしまうそれらを見送る度に、罪悪感や悲しみを覚える。

 

けれども同時にひどく高揚感を味わうのだ。

 

世界は広い。私にはまだ知らない世界がある。

それは主人公が広大な大地を旅する決意をしたような心地に似ている。

 

俺たちの旅はまだこれからだ。

 

そんな心地だ。

 

今はまだ難しいけれど、いつか本当に旅をしてみたい

色んなところに行ってたくさんのものを見て感じて

そうして思うままに筆をとる。

 

そんな生活をしてみたい。

 

そうしたらいつか、今まで消えてしまったモヤモヤ達にも、形を与えることが出来るかな?

 

できたらいいな。

きっと、いつか、絶対。

 


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【短編】気になるあの子は

 

隣のクラスの鈴木さんは、猫をかぶっている。

そして、どうやらそれは他の人には見えていないらしい。 

 

「暑くないの?」

「え?」

 

サンサンと降り注ぐ太陽の中、中庭のベンチに座っている彼女に声をかけてみた。

他クラスの男子がちょっかいをかけにいくほど美人であるらしい鈴木さんの首の上にはふわふわの大きな猫の被り物がついている。 

 

「冬の時期は良いけどさ、気温も湿度も上がってきたじゃん?暑くないの?」

「確かに、暑いけど・・・それはみんな一緒じゃない?」

 

不思議そうに首を傾げ「夏なんだし暑いのは当たり前だよ。」なんていう鈴木さんに心の中で「違う。そうじゃない。」とツッコミを入れる。

 

「それに、高野さんだって暑そうだよ。」

 

可笑しそうにクスクスと肩を震わせている鈴木さんに視界の端で男子が盛り上がっているのが映る。

「夏だからねー。」と適当に返事をしながらまじまじと彼女を見つめる。

 

(確かに、可愛いいんだよなぁ。)

 

ふわふわの白い毛並みにつぶらな瞳。ちょこんと乗っかるピンクの鼻。

 

正直、癒しである。

 

「でも、嬉しいな。私、高野さんと話してみたかったんだよね。ずっと気になってて。」

 

照れたように頬を擦る仕草が本当の猫みたいで本当に可愛い。

 

「そうなの?わたしもずーっと気になってたんだよ。話せてよかった。」

 

ふわふわとお花が舞っていそうな空間を鈴木さんと形成していると、遠くから体育教師の怒鳴り声が響いてくる。

 

「勝手に見学をするな戻ってこい!!!!」

「あー。バレたあ。」

 

カンカンに怒っている教師の様子に渋々立ち上がる。

 

「しょーがないな。戻ってあげよう。あれじゃあ血管破裂しちゃうもんね。」

 

はぁ〜っとこれみよがしに大きなため息をついて移動をすれば後ろでクスクスと楽しそうに笑う声がした。

 

「またね。鈴木さん。またお喋りしよう。」

 

次はもうちょい深く聞けるかな?なんて笑いながら

鈴木さんにヒラヒラと手を振った。

 

 

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ーーーーーーー

 

 

「うん。またね。」

 

気だるげに授業へと戻っていく高野さんを見送ってギュッと手を握る。

 

(緊張した。びっくりした。·····でも、お話出来た。)

 

まだ心臓がバクバクと音を立てている。

なんて言ったってあの高野さんだ。

この学校に入学して人目見た時からずーっと気になっていた。

 

(また、お話してくれるって言ってた。·····次はもうちょっと頑張ってみようかな。)

 

 

 

誰も気がついていないようだけれど、

 

 

隣のクラスの高野さんはいつもお面をつけている

 




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人はそれを瞑想と呼ぶ

 

例えば、

気づいたら夜になっていて部屋が真っ暗になっていたり

光の差し込まない空間に灯りを持たずに入ったり

特にすることがなくて目をつぶったり

 

そんな真っ暗な空間でボーッとしていると

次第に自分が溶けていくような気分になる

 

染み出して、滲んで、薄まって

 

そうして少しずつ  少しずつ  

ぼやけて広がっていく

 

うすーく広がって行って

ついにその空間を薄い私で満たした後に

 

空間を飛び出して更に遠くへ遠くへと広がっていく

 自分の大きさも分からないくらい

大きく     薄く     どこまでも

 

周りにはチラチラとたくさんの光が瞬いている

大きいの  小さいの  強いの    弱いの

 

個性豊かな光が思い思いに煌めいている

 

そこにひとつ

新しい光を

 

優しくて  暖かくて   ホッとするような

そんな癒しの光をひとつ

 

これは私

 

私の光

 

 

 

今はまだ弱くて小さなものだけれど

きっとこれから大きく育つ

 

ピカピカキラキラと瞬く美しい光たちの中で

ひっそりと

 

 

その光景をひとしきり堪能して

楽しんで  癒されて

 

 

パチリと目を開ける

自分の輪郭を自覚する

 

そう、これが私

私の形

 

 

しっかりと形を自覚して、

その奥に光が灯っていることを確認して

 

そうして今日も私は歩いていくのです

 

しっかり、真っ直ぐと前を見て

 

 

あなたの中には、どんな光が灯っていますか?

 


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【短編】雨中の花

 

 

淀んだ空から雨粒がパラパラと落ちてくる。

いつもなら聞こえる元気な子供たちの笑い声や、鳥たちの歌は聞こえず、サーーッ。という雨音が世界を包んでいる。

心做しか視界もなんだか白く濁っているような気がする。

 

くるり

 

そんな中、赤が踊っている。

 

くるりくるり

 

覚めるほどの綺麗な赤が。

 

パシャンッ。パシャパシャ。

 

黄色と一緒に踊っている。

 

楽しそうに、あっちへパシャンッ。

くるくるり

 

魅入られるようにその光景をボーッと見つめていると、ソレは不意にこちらへと振り向いた。

 

「雨、楽しいねぇ。」

 

輝かんばかりの笑顔を向けられて、途端に世界は青く染まる。

 

「綺麗だねぇ。」

 

キャラキャラと笑う声が水滴に反射してキラキラと光り出し、青々とした木々が風に吹かれて、ザーッとその光を振り落とした。

途端に嬉しそうな声が辺りに響きわたり、くるりくるりと赤が舞う。

 

「ね!ママ!」

 

ニコニコと笑う子供は真っ赤な傘を回して、黄色い長靴を水たまりへと振り下ろし楽しそうに、嬉しそうに笑っている。

 

「えぇ。本当に。」

 

微笑みながら子供へと手を伸ばし、手を繋ぐ。

 

( 少し憂鬱になりがちな雨の日も、たまにはいいものだわ。)

 

くるりくるり

パシャンッ。パシャンッ。

 

しとしと降り注ぐ雨の中、赤と青の綺麗な花が2つ。

楽しそうに、嬉しそうに踊っている。

 


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生きる上で必要なこと

 

 物語が好きで

 

想像するのが好きで

 

表現することが好き

 

 

こんなだったら、あんな風なら

もしも、例えば、

 

考えれば考える程世界は広がっていって

終わる事の無いその世界に夢中になれる

 

 

もし私が書くことをやめたら

考えることを、表現することをやめてしまったら

何が起きるのか

 

 

答えは簡単

誰にでもわかる

 

 

特に何も起きない

 

朝起きて、働いて、たまに遊んで、夜眠る

 

何の変哲もない普通の日々を過ごしていくだけだ

 

私の人生に於いて

想像すること、書くこと、表現することは必要不可欠ではない

 

けれど、それがない世界はなんと味気ないものだろうか

 

書かなくても、想像しなくても生きてはいけるけれど

私はきっと何に対しても無感動になってしまうだろう

 

心を揺さぶる、体の奥底から湧き上がるあの衝動も

何も湧き上がっては来なくなるのだ

 

ただただ、流されて漂って

そうしているうちに、いつの間にか終わっている

 

そんな人生になってしまうのだろう

 

それが悪い事だとは思わないけれど

やはり物足りないな、味気ないなと思ってしまう

 

せっかくの人生だ

いつ終わるかも分からない

1回きりかもしれないし、そうじゃないかもしれない

 

私には想像つかないくらいの奇跡が起きて

今、この場所に  この世界に  私はいる

 

どうせなら楽しい毎日を

彩り鮮やかな日々を

幸せで満ち足りた、愛に溢れる生活を

 

 

 

そうして私は今日も生きていくのです

 


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無理な事なんてきっとない

 

目をつぶって考えてみる。

 

そこは誰もが満たされている世界。

小さな愚痴や不満はあれど、基本的に満たされた生活をしている。

 

みんなが生き生きと活動し、たまに俯いて動けなくなってしまった人がいても周りからはたくさんの手がさしのべられる。

 

誰にだって気分の浮き沈みはある。

けれどどれだけ落ち込んでも、支えて引っ張りあげてくれる手がたくさんある。

 

そんな幸せな世界。

そんなあたたかい世界。

涙がでるほど求めている世界。

 

 

「みんな幸せな世界になればいいのに。」

 

そう言うと、大体の人が答える。

 

「そんなの無理だ」と。

 

そうかな?そうなのかな。本当に?

 

幸せなんて人それぞれで、幸せだと感じる基準なんてみんなが違う。

だからこそ、上手く噛み合えばみんな幸せな世界ができるんじゃないかってそう思うの。

 

人間は心と思考を持って生まれた。

 

他者を思いやり慈しむ心を持ってる。

誰かの考えに共感し、高め合う思考力を持っている。

 

私たちは理想を現実に近づける力を持っている。

 

川が近くになくてもおいしい水が飲めるようになったように。

遠く離れていても大切なあの人と会話ができるようになったように。

途方もなく遠いあのお月様に降り立つことができたように。

 

きっときっと、みんなが幸せな世界を作ることは無理なことなんかじゃない。

 

今までだってやってきてる。

ずっとずっと、人間はそうやってきた。

 

無理だと思える絵空事を、現実に実現して見せてきた。

 

だから私は今日も言うの。

いつかそれが実現することを信じて。

 

「みんなが幸せな世界になればいいのに」と。

 


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奇跡のような私たち

 

 

時折ふと、自分の見ているものが何なのかわからなくなる時がある

 

自分の見聞きしているものはどれくらいが真実なのか

当たり前のようにみんながソレを見ているものだと思い込んでいるけれど果たしてそれが本当に同じものなのか

 

今、私の見ている「赤」はみんなにとっても正しく「赤」で

けれど私の「赤」とみんなの「赤」は同じなのだろうか?

 

夏は暑くて、冬は寒い

怪我をすれば痛いし、愛する人とハグをするのは安心する

 

けれど、その感覚は本当にみんな同じように感じるのだろうか?

 

ソレを表す名前が一緒でも実際は全然違ったりするのではないだろうか?

 

それはきっと答えなんてない。

誰にも証明はできないし、どう頑張ろうと分かりえない事だ。

 

分からない事だから、私は考えてしまう。

 

自分はこうだけど、他の人はどうなんだろう。

あの人はああ言ってたけど、私は嫌だな。

 

絶対に、全てを分かりえる訳では無いけれど

それでも考えると分かることがある

広がるものがある。

 

人は孤独だ

誰もが独りで、そこに立ってる

矛盾を抱えて、共感を求めて、愛を求めてる

 

だから、考えて考えて考える。

理解して、共感して、愛し合える。

 

私たちは誰一人として同じものはいないし

誰もが唯一で絶対の存在だけれど

 

他者を思いやり、慈しみ、愛することができる

 

不完全だから完璧

 

人間がどうやって生まれたのかは諸説があるけれど

 

神様が作ってくださったにしろ

進化してそうなったにしろ

宇宙からきたにしろ

 

こんな不思議でおかしな存在が生まれたのは

 

奇跡的で神秘的な事だなと思うのです

 

 


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