おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

【短編】願い込めて、想い込めて、綴る言の葉

涼しい風が吹き抜けて、尊き青が広がっていく。 ベッタリ張り付いたような薄い雲がゆっくり流れる。 「天気が良いねぇ。」 のんびりとした声に振り返り笑みをこぼした。 「ひとみも絶好調だね。」 「当然でしょう?」 にこにこしながら隣に並ぶ彼女に 自然と…

【短編】雲の向こう焦がれる

澄みわたるような美しい青をどんよりとした雲が覆い隠している。 いつもは目が開けられないくらい眩しい空からは優しすぎる淡い光が降り注いでいる。 「何してるの?」 いつの間にかそばに来ていた、ゆきに「見て。」と頭上を指させば彼女は「曇ってるねぇ。…

【短編】空飛ぶクジラ

「まま、見て!クジラさんだよ!!」 ガタンゴトンと心地よく揺れるまどろみの中、興奮気味の高い声が車内に響いた。 「まーくん。しー。」 慌てた様子のお母さんらしき人が慌ててたしなめるも子供は「ねぇ、見て!まま、あれ、あれ!」としきりに窓の外を指…

【詩】大きな背中

忘れられない景色がある。 燃え盛るような赤い夕日をバックに、あの人が立っていて、数メートル離れた私がその光景を眺めていることも気づかず私に背を向けていた。 普段は大きく頼りがいのあるその背中が、真っ直ぐ凛とたっているその体が、赤い光に包まれ…

【お題短編】ひと

お題:足す、亜目、伍する 「残念ながらあなたは人ではないようです。」 生真面目な顔をした男は私にそう言った。 「ちょっと、意味がわからないんですけど。」 私も真面目な顔でそう返した。 「最近、ホモ・サピエンスに分類されているものによく似た生き物…

【短編】働きアリ達の世界を

たんっ。と軽やかな音を鳴らして跳ね上がる。 頬を撫で、髪の隙間を通り抜けていく風が心地いい。 地球に引っ張られるままに近くのビルへと降り立ち、直ぐにまた跳ね上がる。 目的地もなく、行きたいままに適当にビル街を跳ね回っているとビルの隙間に見知っ…

【短編】子供たちに宝物を

いい子のところにはサンタさんがやってくる。 チラチラとお空から雪が訪れる頃、シャンシャンと軽やかな鈴の音と共に。 お友達のトナカイと一緒に凍てつく寒い夜に暖かなロウソクの火のようなお洋服をまとってみんなの元にやってくる。 すやすやと寝静まる子…

【お題短編】小さな教会

【未来・十字架・恩返し】 崩れた建物の中にある大きな大きな十字架の前。 キラキラと色とりどりの光がチラつくその場所で一人の少女が熱心に祈りを捧げています。 「なにをしてるの?」 一人の男の子が少女へと声をかけました。 「許しを乞うているのです。…

【お題短編】大切な宝物

【宝物・レモンクリーム・水】 そっと窓へと手を向ける 外は雨が降っていて、水の筋がたくさん着いていた つーっとスジをなぞるように指を動かす ガラスに反射して、私の姿も窓に写っている 雨に降られ、水に濡れた私が お気に入りのレモンクリームのワンピ…

恐怖と憧れそして夢。

とある天才小説家が主人公の小説を読んだ事がある。 複雑な家庭で育って、不幸のどん底みたいな日々を這いずって書き上げた小説が高い評価を経て一躍有名作家になる。 そうして幸せな日々が少しづつ主人公へと訪れる。 けれど、幸せになればなるほど主人公は…

【短編】人生

死ぬことは恐ろしい 日々身体が衰え、朽ちていくのを実感するのも 今ある意識が消えてなくなってしまうことも 恐ろしくて、恐ろしくて その先にもきっと何かがあるはずだと夢想して みんなそうだと、そうあるべきだと達観して 死に対する無知の恐怖へと立ち…

書きたいのになぁ

ぐるぐる ぐるぐる 文章にならない単語が身体の中で モヤモヤ モヤモヤ 繋がりのないシーンのイメージがふっと浮いては消えていく 形にしたくても、文章にしたくても 手を伸ばすとふわっと消えてしまう 真っ白な紙を睨みつけ、想像の手をあちらこちらへと伸…

【お題短編】小さな来訪者との逢瀬

【ラベンダー、音、稚魚】 風鈴のような可愛らしい音とともにそれはやってくる。 窓の方から入ってくることもあれば、机の引き出しを開けた途端に出てきたこともあった。 その日はなんだか1日上手くいかない日だった。 小さなミスをポツポツと積み重ね、しょ…

ガラスペンで紡ぐ言ノ葉

ペン先にインクをつける。 じわぁ。っとインクがかけ上がる。 はやる心臓を意識しながら紙へとペンを近づけた。 ゆっくりと文字を書く。 紙へとインクが流れ込んでいく。 言葉が生まれる。 想いが、インクとともに髪へと染み込んでゆく。 言ノ葉を紡いで染み…

【短編】物語は星の数ほど

鈴を転がすような虫の声が優しく響く。 そよそよと私の髪を撫でる風が遊んでる。 空に流れる大きな川と優しく見守るお月さま。 ゆったりと流れる時間 。 目を閉じて、深呼吸をひとつ。 耳に届く微かな足音と気配もひとつ。 「こんな時間にお散歩ですか?」 …

【お題を使って短編】いつもここで

今週のお題「ホーム画面」ーーーーーーーーーーーー気がつけば、あなたは私を見てる。 長いこと眺めているわけではないけれど、一日の始まりには必ず私を見るし、電車の中や休憩時間など時間が余ればあなたは私を見つめてる。わかっているわ。 あなたのお目…

議員さんの給料問題について頭良くない私が考えている事

最近よく議員さんの給料について話題に上がっているのを見る。 議員さんの給料はとても高いらしい。 私は、そうは思わない。 だってそれは正当な報酬であると思うから。 日本の代表として、 日本をより良くするために。 時には海外の人と交流や交渉をして、 …

お金の価値。私の価値

生きるためにはお金がいります。 必死に働いて、働いてやっとなんとか生きられる程の資金を頂けます。 物価が上がるということは、それだけ農家さんや製作者さん達が苦労して作り上げているということ。 それだけ私達も苦労しているということ。 モノの価値…

無力な想いのかけら

暖かな光が差し込んで 柔らかな風が毛先で遊んでいる 木陰で猫の親子があくびをひとつ 見上げた空には小鳥たちが楽しそうに飛んで行った 子供たちは笑顔でかけまわり 大人たちがそれを微笑ましそうに眺めている 幸せな光景だ 涙が出るほどに 祈らずにはいら…

寂しくないよ

ほうと一息ついて パチリと瞬きひとつ もはや物置小屋のような部屋のベランダを開いて 雑草生い茂る小さな庭を眺める 見上げた空は高く青くて なんだかとても寂しくなった 明瞭な視界が怖くなり 鼻と耳にのしかかるメガネを片手で雑に外す 途端にぼやけて滲…

【短編】椿の花を

小さな頃。通学路にいつもたっているお姉さんがいた。 お姉さんはいつも道脇にある椿の木を見ていた。寒くなってきて、赤い花を咲かせる頃になるとお姉さんはそれは嬉しそうに微笑んでいたのをよく覚えている。 そして、花が落ちる頃になると白くて細いその…

広い空 続く大地

そっと下ろした足の裏に伝わる柔らかい土の感触 日に照らされた土はほんのり暖かい じんわりと伝わるその熱にほぅ。と息をひとつ 見上げた空は 高く ひろく どこまでも青かった 雲たちはゆうゆうと流され さわさわと風が頬を撫でていく 気持ちがいい こんな…

雨も私たちもみんなみんな

空で産まれた水滴たちが 地上へと降り注がれる ザァーっと音を立てて降り立った水滴たちは 地球に深く深く浸透してき 思い思いの時間をかけて海や川へでる そうしてギラギラと照らす太陽の光に導かれて 上へ 上へ 帰っていくのだ 思い思いの月日をすごして …

【短編】その香りの導く先に

温められたポットにお湯を注ぎ2分ほど蒸らす。 お気に入りのティーカップを戸棚から出して、そこに抽出された紅茶を注いでいく。 華やかな香りがふわりと辺りに広がった。 心安らぐやさしい香りに満たされる。 「香りと記憶は深く結びついているらしい。」 …

【短編】川の上にいるものは

ジジジジジッ。ミーンミンミンミンミン。 セミのコンサートが開催される中、私と仲ちゃんは2人カウンターに座っている。 太陽はサンサンと降り注ぎ世界に熱を送り続け、その熱がじわじわと入り込んでくるガラス張りの建物。 そこに私と仲ちゃんはかれこれ3時…

私は見つめ直す。どう生きたいのか

気がつけば、仕事に忙殺されている。 働いて、働いて、働いて 休みの日は泥のように眠りについて。 月日がものすごい勢いで過ぎ去っていく。 ふと我に返り呆然とする 一体、何をしているのだろう? 私がしたかった事は一体なんだっただろう? そんな時、とあ…

ここに

私は何を書きたいんだろう 何を残したいんだろう この場所に この世界に 衝動的にやってくる 「書かなきゃいけない」という衝動は 一体、どこからやってくるのだろう 知らせたい 知って欲しい 見て欲しい 感じて欲しい 私がそう思っているのだから間違いなく…

私の課題

やりたい事がたくさんある。 やらなきゃいけないこともたくさんある。 あっちも、こっちもとバタバタ過ごして 気がついたら夜になっていて、沈むように眠りに落ちる。 1日、2日。 なんだか充実した毎日を送っている気になっている。 3日、4日 少し疲れてきた…

書きたいと思った時 身体のどこからかそれが溢れ出して、目の前の紙や画面に流れ込んでいく時と その思いがグルグルと身体の中で渦巻くだけで、全く出てきてくれない時がある。 前者は良い。するすると体から抜け出た思いや世界が形を作り目の前に現れてくる…

【短編】気になるあの子は

隣のクラスの鈴木さんは、猫をかぶっている。 そして、どうやらそれは他の人には見えていないらしい。 「暑くないの?」 「え?」 サンサンと降り注ぐ太陽の中、中庭のベンチに座っている彼女に声をかけてみた。 他クラスの男子がちょっかいをかけにいくほど…