おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

【短編】気になるあの子は

隣のクラスの鈴木さんは、猫をかぶっている。 そして、どうやらそれは他の人には見えていないらしい。 「暑くないの?」 「え?」 サンサンと降り注ぐ太陽の中、中庭のベンチに座っている彼女に声をかけてみた。 他クラスの男子がちょっかいをかけにいくほど…

人はそれを瞑想と呼ぶ

例えば、 気づいたら夜になっていて部屋が真っ暗になっていたり 光の差し込まない空間に灯りを持たずに入ったり 特にすることがなくて目をつぶったり そんな真っ暗な空間でボーッとしていると 次第に自分が溶けていくような気分になる 染み出して、滲んで、…

【短編】雨中の花

淀んだ空から雨粒がパラパラと落ちてくる。 いつもなら聞こえる元気な子供たちの笑い声や、鳥たちの歌は聞こえず、サーーッ。という雨音が世界を包んでいる。 心做しか視界もなんだか白く濁っているような気がする。 くるり。 そんな中、赤が踊っている。 く…

生きる上で必要なこと

物語が好きで 想像するのが好きで 表現することが好き こんなだったら、あんな風なら もしも、例えば、 考えれば考える程世界は広がっていって 終わる事の無いその世界に夢中になれる もし私が書くことをやめたら 考えることを、表現することをやめてしまっ…

無理な事なんてきっとない

目をつぶって考えてみる。 そこは誰もが満たされている世界。 小さな愚痴や不満はあれど、基本的に満たされた生活をしている。 みんなが生き生きと活動し、たまに俯いて動けなくなってしまった人がいても周りからはたくさんの手がさしのべられる。 誰にだっ…

奇跡のような私たち

時折ふと、自分の見ているものが何なのかわからなくなる時がある 自分の見聞きしているものはどれくらいが真実なのか 当たり前のようにみんながソレを見ているものだと思い込んでいるけれど果たしてそれが本当に同じものなのか 今、私の見ている「赤」はみん…

いい日が始まる

大きく深呼吸をして 両手を広げ思いっきり上へ伸ばした 見上げた空は高く高く どこまでも青い空が広がっている 視界の端では 青々とした木々が風に揺られ踊っている 目を閉じれば ザァー っと風の駆け回る音 どこかで チリン と鈴がなり どこからともなく 楽…

【短編】その場所はあなただけのもの

真っ白いその空間に彼女は1人たっている。地面は薄く水で覆われていて、時折ピチョンッと跳ねる音がしていた。 「・・・・・・。」 彼女は、ぼぅっと足元を見つめている。自分の足裏に微かな水の揺らめきを感じながら、己の足元を見つめている。 「やぁ!酷い顔だ…

私よ心に刻め。しっかりと

私は人見知りだ 加えて、極度の面倒くさがりでもある 人と足並みを合わせるのが嫌だって訳では無いけれど、疲れるなと思ってしまうし 集団行動も楽しくて好きではあるけれど、人数が増えれば増えるほど気を使うことが増えて面倒だなと思う 問題事が起きた時…

その先には

「もーーーいーーかーーい?」 高くそびえる杉林の中。幼い声が辺りに反響している。 「まーーーだーだよーーー!」 杉林を分断するようにまっすぐひかれた砂利道が ジャッ。ジャッ。ジャッ。 と軽い音を立てている。 「もーーいーーかーーーーい?」 砂利道…

姿なき訪問

朝起きて、カーテンを開ける 太陽の柔らかい光が部屋の中へと降り注ぐ ひとつ、大きく深呼吸して リビングにある大きなソファーへとダイブする。 何の変哲もない天井を見つめてボーッとしていると、窓の外から 「ホーホケキョ。」 と声がする。 「ホケキョ。…

【短編】おともだち

「幽霊になったら何がしたい?」 唐突にかけられた声に、チラリと横に座る男に目を向ける。 「・・・・・・。」 「え?無視?無視は酷いよ!」 ニコニコ笑う男から視線を本に戻すと、男は隣で大袈裟に身振り手振り使って邪魔してくる。 「勝手に隣に座らないでくれ…

日常の非日常

ごおぅん。ごおぅん。 一定の間隔で、低い音が響いている。 ごおぅん。ごおぅん。 低い低いその振動は私の体をビリビリと揺らしている。 ごおぅん。ごおぅん。 いま、私はどこにいるんだろう? なにをしていたんだっけ? ごおぅん。ごおぅん。 チカチカとま…

お昼寝

青く透き通るお空からサンサンと太陽が降り注ぐ ベランダの窓を開けて、その太陽を家の中へと招き入れた。 照らされている畳の上に寝そべり、大きく深呼吸をひとつ。 視界に広がるのは、綺麗な青と ゆるりと移動していく白い雲たち どこからが聞こえる、鳥た…

【短編】鳥と黒猫とお月様

星が輝き、三日月が見守る中に鳥籠がひとつ。 ゆらゆらと揺れている。 鳥籠の中には 黄色い体に鮮やかなオレンジの嘴と羽をもった鳥が1羽。 鳥籠と共にゆらゆらと揺れている。 その下には、揺られる鳥籠を見つめる1匹の黒猫。 「ねぇ、そこは狭いでしょう?…

はじまり

瞼をゆっくりと持ち上げる 視界に入ってきたのはぼんやりとした世界。 薄暗く、ゆらゆらと光が揺れている。 とっとっとっ 様々な音が聞こえる中で一際大きく聞こえている一定のリズムで刻まれた音にとてつもない安心感を覚えてゆっくりと瞬きをした。 ときお…

私だけの大切な

順位をつけるのが苦手だった。 大切なもの すきなもの おきにいり 私の中にそれは沢山あって、世界にもそれは溢れかえるほど沢山あるのに みんなが言う 「どれが1番いい?」 と。 1番ってなんだろう。 何にでも、いい所と悪いところがあるのに。 どうやって1…

【短編】ときはなつ

青。 蒼。 碧。 あお。 真白くそびえ立つソレを睨みつけていた数分前とは打って変わって僕はひたすらに腕を動かす。 黄色に、 赤に、 白。 みどり。 時々、黒。 上から下へ。 円を描いて。 叩きつけて、 はね上げる。 一瞬足りとも、脳内に焼き付いたソレを…

ゲームのはなし

私は飽き性である。 なので、ゲームはやるよりも見ている方が好き。 なぜなら、レベル上げやらなにやら細々していることが面倒くさく飽きてしまうからだ。 私は壊滅的にゲームに向いていない 最初の1、2週間のめり込んでやり込んで、ストーリーが進まなくな…

【短編】今年もやってきた幸せ

大きく息を吸って、ゆっくりと吐く 爽やかな空気と華やかな香りが肺いっぱいに満たされる。 目を開くと瞳に映るのは、雲ひとつない真っ青な空の下に広がる赤や白。 そしてたくさんの人、人、人。 ウイルスの影響で去年よりは少ないとはいえ、それでも朝から…

書店

壁一面に並ぶたくさんの書籍をひとつひとつ見回して歩く。 恋愛 冒険 感動 サスペンス 魔法に化学 本は異世界への扉であり、窓である。 私の知らない世界を、常識を見せてくれる。 たくさんの想いを私の中に溢れさせてくれる。 様々なことを思考して、想像し…

もどかしい想い

ふと、見上げた空が綺麗だったから 通り過ぎの会話が面白くて 目の前を猫がとおりすぎたから 物語は何処にでも転がっていて 世界は今も広がり続けている 目に映るそれらは綺麗で、美しくて 時間を忘れて魅入ってしまう あの子はこれからどんな旅に出るのだろ…

希う

優しい人でありたい 困っている人に手をさしのべられるような 苦しんでいる人に寄り添ってあげられるような 他者を思いやり、尊重できるような 人は誰しも特別なものだと そんな当然のことを当たり前のように振る舞える そんな、いい人でありたいと願ってい…

【短編】世界はふしぎで溢れてる

「ねぇ、何してるの?」 かけられた声に優里が振り向くと、そこには同い年くらいの女の子が不思議そうにこちらを見ていた。 優里にはお友達が沢山いるけれど、その子は会ったことがない子だったので優里はキョトリと1つ瞬きをして首を傾げる。 「だあれ?」…

嬉しい誤算

Netflixのオリジナル海外ドラマにはまった。 気がついたら1日が終わっていることが多く、ちょっとしたタイムトラベル気分を味わっている。 人を引き込み、熱中させる作品 私もいつか、誰かにタイムトラベル気分を味合わせるような作品が作りたいなと思う今日…

コロナによる自宅療養中の死亡について

私たちを悩まして、苦しめているコロナウイルスの自宅療養中の死亡がニュースで大変目立っている。 自宅療養中の急変による死亡を防ぐために、見守りシステムを作れないものなのだろうか? 例えば、犬や猫ちゃんを留守中に見守る機械とかを使って 倒産などで…

【短編】ワスレモノ

風に吹かれ緑が揺れている。 緑が揺れると同時にチラチラと木漏れ日の光も踊り、どこか遠くで歌う鳥たちの声が響きあう。 思わず、ため息が漏れた。 大きく力強く存在しているこの木は、一体いつからここにいるのだろう? きっと、私が生まれるよりもずっと…

【短編】雨上がり

青く澄み渡る空。白い雲。煌々と輝く太陽が降り注ぐ、ジリジリとした熱。 目の前にはひらひらと踊るように動く黄色。 「君は相変わらず、おかしなことを言うね?」 くすくすと楽しげにそう言い放った彼女に少しムッとしてしまう。 「おかしいとか、先輩にだ…

早起き出勤

目を開ける。 外はまだ暗い。 重たい体を起こして身支度をして、暖かいお茶漬けを食べてホッと一息。 残ったお湯で水筒にお茶を注ぎおにぎりと一緒にカバンへしまう。 上着にマフラー、マスクに手袋。 防寒対策をしっかりとして「よしっ!」とひとつ気合いを…

黒い穴

足りない。 たりない。 何かが足りない。 産まれた時からずっと何かが欠けている。 どんなに楽しくても どんなに笑っていても どんなに恵まれた環境にいると理解していても それでも 心にはポカリと大きな穴がある。 暗くて、先の見えない真っ暗闇 幼い頃そ…