足りない。
たりない。
何かが足りない。
産まれた時からずっと何かが欠けている。
どんなに楽しくても
どんなに笑っていても
どんなに恵まれた環境にいると理解していても
それでも
心にはポカリと大きな穴がある。
暗くて、先の見えない真っ暗闇
幼い頃それがどうしようも無いほど恐ろしかった私はその穴を隠すことに必死だった。
覆って
重ねて
乗せて
塞いで
掛けて
無かったことにしなければ
コレはあってはいけない物なのだと
隠して見ないようにして埋めた気になって安心する
けれど実際は埋まった訳では無いから、ふとした拍子に自分の穴を思い出し足元が崩れるような心地になるのだ。
こわい。
こわい。
こわい。こわい。こわい。
その穴が恐怖を産んでいることはわかっているのに、その穴をどうすればいいのか分からない。
暴れて、泣きじゃくって、必死に覆い隠して
そして気がつく
わからないから見ないようにすると
それはずっとわからない
わからないことは怖いことだから
私はずっと 怖いままだ
それに気がついて愕然として隠す手を初めてやめた
今まで逸らしていた穴を塞いでいるもの達を呆然と見つめて
それらが
雁字搦めに己を縛り付けているのを見た
「なんで私は自分を縛っているんだろう?」
震える手でひとつ剥いてみる
少し身動ぎができるようになった。
もうひとつ引き剥がす
呼吸が少し、ラクになる
ひとつ、ひとつ、またひとつ
知らなくては。
私は知らなくてはいけない。
きっとソレが恐いことをおしまいにする第1歩だから
少しずつ軽くなっていく身体に
広がる視界に勇気を宿して
強く、強く、足を踏み出した
きっといつか、私はそこにたどり着ける
その時、私は一体 なにを思うのだろう