おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

寂しくないよ

 

ほうと一息ついて

パチリと瞬きひとつ

 

もはや物置小屋のような部屋のベランダを開いて

雑草生い茂る小さな庭を眺める

 

見上げた空は高く青くて

なんだかとても寂しくなった

 

明瞭な視界が怖くなり 

鼻と耳にのしかかるメガネを片手で雑に外す

 

途端にぼやけて滲む世界は

 

空も雲も

土も草も木も

この家を囲む塀も家も私も

全部ぜんぶゼンブ

 

溶け合って混ざりあっている

 

まるで、最初からひとつだったみたいに

 

「ふふっ。」

 

口から楽しげな音が漏れて

投げ出した両足をパタパタとさせる

 

楽しい音は絶えず体から湧き出して

私の体をゆらゆらと揺すった

 

「おーい!もう行くよー。」

 

かけられたその声に元気よく大きな返事を返した