おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

私よ心に刻め。しっかりと

 

 

私は人見知りだ

加えて、極度の面倒くさがりでもある

 

人と足並みを合わせるのが嫌だって訳では無いけれど、疲れるなと思ってしまうし

 

集団行動も楽しくて好きではあるけれど、人数が増えれば増えるほど気を使うことが増えて面倒だなと思う

 

問題事が起きた時も、誰かに相談するより先に自分で何とかする方が早いと自己完結することが多い

 

人間は矛盾を抱えて生きるものだけれど、私の中の1番の矛盾点はそこだろう

 

人が好きで、人と関わる事を幸せに感じながら

そういう事は面倒くさくて疲れるから極力したくないと思う

 

 

けれど、私の生きる原動力は他者と関わる事にある。

 

両親と会っておしゃべりをした後は、決まって調子がいいし

 

兄弟と討論会をすれば、己の未熟さに気がついてやる気が出るし

 

友達と楽しく話したあとは、何事にも前向きにチャレンジできる。

 

先輩たちや上司の話を聞けば、自分の世界や価値観が広がり物事をもう一度見直してみたりする

 

私の人生の分岐点にはいつも誰かがいる。

私の幸せの中にはいつもみんながいる。

 

私の道を決めるのは私で

私の人生は私だけのものだけれど

 

その私の人生を支えて、見守ってくれる人達が

世界には溢れていることを

 

私は決して忘れてはいけない

 

 

そう、思う今日この頃です

 


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その先には

 

「もーーーいーーかーーい?」

 

高くそびえる杉林の中。幼い声が辺りに反響している。

 

「まーーーだーだよーーー!」

 

杉林を分断するようにまっすぐひかれた砂利道が

ジャッ。ジャッ。ジャッ。

と軽い音を立てている。

 

「もーーいーーかーーーーい?」

 

砂利道の両脇には等間隔で石の灯篭が設置されていて、どこか厳かな雰囲気が漂っている。

 

「まーーだーーだよーーーーー!!」

 

長い間そこにあるのか、医師の灯篭には緑色の苔がそこかしこに生えていて彩りを与えている。

 

「もーーいーーーかぁーーい?」

 

先が見えないほど長い長いその道の先は、一体どこに続いているのだろう?

 

「まぁーーだーーだよーーー!!」

 

 

静かな静かなその場所に、楽しそうな幼い声と砂利の軽い音だけが響いていた。

 


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姿なき訪問

 

 

朝起きて、カーテンを開ける

 

太陽の柔らかい光が部屋の中へと降り注ぐ

 

ひとつ、大きく深呼吸して

リビングにある大きなソファーへとダイブする。

 

何の変哲もない天井を見つめてボーッとしていると、窓の外から

 

「ホーホケキョ。」

 

と声がする。

 

「ホケキョ。」

 

なんとなく返してみた。

 

「ホーホケキョ。」

「ホケキョ。」

「ホーホケキョ。」

「ケキョケキョ?」

「ホーホケキョ。」

「ホケキョ。」

 

しばらく姿の見えない可愛いお友達とお話をしていると、窓の外からバサバサッという羽ばたきの音がしてそれっきり声は聞こえなくなった。

 

 

「ホーホケキョ。」

 

いってらしゃいを込めて最後に一言つぶやいてソファーから体を起こす。

 

うーーんと伸びをして、支度を始める。

 

うん。今日もきっと、とてもいい日だ。

 



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【短編】おともだち

 

「幽霊になったら何がしたい?」

 

唐突にかけられた声に、チラリと横に座る男に目を向ける。

 

「・・・・・・。」

 

「え?無視?無視は酷いよ!」

 

ニコニコ笑う男から視線を本に戻すと、男は隣で大袈裟に身振り手振り使って邪魔してくる。

 

「勝手に隣に座らないでくれる?」

 

鬱陶しさに視線は本に向けたままそう冷たく告げたのだが、男はパァーっと輝かんばかりの笑みをうかべ

 

「僕はさ、僕はさ、空飛んだりこの学校の敷地を壁とかガンガンすり抜けてまっすぐ歩いたりしたいんだよね。何秒で端から端まで行けると思う?まっすぐだから30秒あれば端から端まで行けると思うんだよね僕。」

 

こちらの様子お構い無しでマシンガントークを始めた。

 

「よくさ、女子トイレ除くとか女子の着替えを除くとかあるじゃん。でも、僕それは良くないって思うんだ。例え見えないからってさ、それは良くないよ!絶対!!」

 

「そう、紳士的ね」

 

大袈裟に、身振り手振りを交えながら熱心に話す男に適当に返事を返せば男は嬉しそうに

「そうかな?えへへ。そうかなぁ?」と1人で悶えている。

 

「気持ち悪いからやめて。今すぐ。」

 

眉をしかめてそういえば男は素直におかしな挙動を止めた。

 

「うん、ごめんね。でもおしゃべり楽しいねぇ。」

 

「私は楽しくないわ。嫌な視線が集まるもの。」

 

なおも、ヘラヘラと笑う男にピシャリと言い放ち周囲に視線を巡らせるとそこかしこでヒソヒソ、クスクスと声が聞こえてくる。

 

「ねぇ、あれさぁ」

「しっ!見ちゃダメだよ。頭おかしいの伝染るよ。」

「きもちわるぅい。」

「1人で喋って何やってんだろ。」

「イマジナリーフレンドじゃね?」

 

好き勝手話して嫌な視線を不躾に送ってくる彼らに眉間のシワがいっそう深くなった。

 

「あ、あー。ごめんね。ぼく、でも、」

 

やっと周りの様子に気がついたのか、隣の男がさきほどまでの態度とは打って変わって俯きボソボソと話す。

 

テーブルの上に投げ出されていた手は固く、固く握りしめられまっすぐこちらを見つめていた瞳は今はじっと己の膝あたりをウロウロとさ迷わせていている。

 

「周りの視線が嫌なだけで、別にあんたと話すのが嫌なわけじゃないわ。」

 

ジメジメとした態度があまりにも鬱陶しくてため息とともにそう告げると、男はパッと顔を上げて私の顔をジーッと見つめてきた。

 

なんだか居心地が悪いので視線を逸らし逃げるように手元の本へとグッと顔を近づける。

 

「あのさ!じゃあさ!また、おしゃべりに来てもいい?」

 

明るく、嬉しそうな弾んだ声がすぐ横で響いている。

 

「・・・図書館の出入りは自由でしょ。好きにすればいいじゃない。」

 

それに素っ気なく返せば、男の大きな返事と学校のチャイムが辺りに響いた。

 

「じゃ、じゃあ、また来るね」

 

にこにこと手を振る男に、視線だけで返事をして私も立ち上がる。

 

『 幽霊になったら何がしたい?』

 

男の質問を思い出して、ぽつりと呟く。

 

「何がしたいとか、考えたこと無かったな。」

 

まっすぐ歩きながら、考える。

私ならどうだろうと。

そして、その答えを次会った時あの男と話したらあの大袈裟な男はどんな反応をするだろうか。

 

込み上げる笑みをそのままに、少女はゆっくりと本棚の中へと消えていった。



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日常の非日常

 

ごおぅん。ごおぅん。

 

一定の間隔で、低い音が響いている。   

 

ごおぅん。ごおぅん。

 

低い低いその振動は私の体をビリビリと揺らしている。

 

ごおぅん。ごおぅん。

 

いま、私はどこにいるんだろう?

なにをしていたんだっけ?

 

ごおぅん。ごおぅん。

 

チカチカとまぶたの向こうで光が瞬いている。

あぁ、わたし  目をつぶってるんだ。

 

ごおぅん。ごおぅん。

 

ごおぅん。ごおぅん。

 

 

 

 

 

「はい、終わりましたよー」

 

暗いところから引きづり出されて看護婦さんに声をかけられる。

 

ゆっくり開いたまぶたに白い天井とライトが見えた。

 

「ふふっ。」

 

思わず笑ってしまった私に、看護婦さんが不思議そうに首を傾げる。

 

「なんだか、どこかに転送されてるみたいで。

・・・ちょっと楽しかったです。」

 

緩む頬をそのままに初めての体験の感想を告げると、看護婦さんはキョトンとした後すぐににっこりと微笑み返してくれた

 

 

 

お昼寝

 

青く透き通るお空からサンサンと太陽が降り注ぐ

 

ベランダの窓を開けて、その太陽を家の中へと招き入れた。

照らされている畳の上に寝そべり、大きく深呼吸をひとつ。

 

視界に広がるのは、綺麗な青と

ゆるりと移動していく白い雲たち

 

 

どこからが聞こえる、鳥たちの囀りと

遠くから聞こえる、子供達の笑い声

 

太陽に光に包まれたからだは、じんわりと暖められていき、ゆっくりと瞼が閉じていく

 

落ちていく意識の中ふと、「幸せだなぁ」と思った。
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【短編】鳥と黒猫とお月様

 

 

星が輝き、三日月が見守る中に鳥籠がひとつ。

ゆらゆらと揺れている。

 

鳥籠の中には

黄色い体に鮮やかなオレンジの嘴と羽をもった鳥が1羽。

鳥籠と共にゆらゆらと揺れている。

 

その下には、揺られる鳥籠を見つめる1匹の黒猫。


「ねぇ、そこは狭いでしょう?」

 

黒猫は鳥籠の中にいる鳥へと何度目か分からない問いかけをする。

 

「生まれてからずっとここに居るから、狭いとか考えた事ないよ。」

 

鳥も同じように何度目か分からない答えを返した。

 

「外の鳥たちはね、お空をうーんと自由に飛び回るんだよ。見たの。あなたのような鳥があのお月様のように空へ浮かんでいくのを。」

 

黒猫は夜空に浮かぶ三日月を見つめて自分の見た事を思い出しうっとりとする。

 

「すごくね、きれいだった。」

 

反対に鳥は興味無さそうに。

 

「へぇ。そうかい。それはすごいね。」

 

と返しただけだった。

 

「あなたはずーっとそこにいるけれど、もっと自由に動き回りたいって思わないの?」

 

黒猫は不思議そうに鳥へと尋ねた。

 

黒猫は自由が好きで。動き回ることが大好きだったから、鳥が一日中狭い籠の中でジーッとしているのが心底不思議だったのだ。

 

「僕はじっとしてるのが好きだからね。こうしてゆらゆらと揺られているのがとても落ち着くのさ。」

 

ゆらりゆらりと揺られている鳥籠の中で鳥はそう答えた。

 

「ふーん。変なの。私ならきっと耐えられないのに。」

 

「僕からしたら、そんなに忙しなく動き回ってなんで疲れないんだろうって思うよ。そっちの方が僕には耐えられないね。」

 

納得出来ないと思いっきり顔に書いてある黒猫に鳥はくすくす笑いながらそう言った。

 

けれども黒猫は諦めずにもう一度問いかける。

 

「でも、1度くらいはそれを壊して出てきてみたいって思わない?」

 

「君は1度でもその首に巻き付けたものを壊そうと思うかい?」

 

質問に答えず問いを返された黒猫は、ぱちくりと目を瞬いた。

自分の首にぐるりと巻きついた淡いピンク色の首輪。

可愛いあの子が黒猫に似合うと黒猫にくれた大切で大事なもの。

 

「壊すわけない!たった一度だって壊そうなんて思わないよ。これは大切だもん。」

 

大きな声で鳥へと返すと、鳥は

 

「それと同じことさ。」

 

と笑った。

 

それを聞いて黒猫は諦めたように地面へと伏せる。

しかし、今度は鳥が黒猫へと問いかける。

 

「それにしても、今日は嫌に粘ったね。どうしたの?」

 

不思議そうにかけられた声に黒猫はゆっくりと体を持ち上げた。

 

「だって、本当にきれいだったの。青い空につーって上がっていく鳥たちが。」

 

そう言って黒猫は夜空を見上げる。

 

「あなたはお月様とおんなじ色をしてるでしょう?

だから、きっと、あなたが浮かんでいったらもっともっと綺麗なんだろうなぁってそう思ったの。」

 

そして、目の前の鳥籠の中で揺られている鳥へと目を向ける。

 

「私はそれを見てみたいなぁって思ったの。」

 

まっすぐ見つめられた鳥はパタパタと少し羽を動かし、そして、少し照れくさそうに

 

「それは、光栄な事だね。」

 

と微笑んだ。

しばらく羽をパタつかせてから鳥が再度口を開く。

 

「ねぇ、知ってるかい。僕はここで揺られているのがとっても気に入っているけれど、それと同じくらいこうやって君とおしゃべりするのも好きなんだ。

 

それを聞いて黒猫はぱちくりと目を瞬かせそれからにっこりと笑う。

 

「それは、とても光栄な事ね。」

 

 

キラキラと瞬く星々に囲まれた中。

 

ゆらりゆらりと揺れる鳥籠とそれにより沿うように座る黒猫の楽しそうなお喋りを今日も

 

お月様が優しく見守っている。


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