おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

2023-01-01から1年間の記事一覧

【短編】空飛ぶクジラ

「まま、見て!クジラさんだよ!!」 ガタンゴトンと心地よく揺れるまどろみの中、興奮気味の高い声が車内に響いた。 「まーくん。しー。」 慌てた様子のお母さんらしき人が慌ててたしなめるも子供は「ねぇ、見て!まま、あれ、あれ!」としきりに窓の外を指…

【詩】大きな背中

忘れられない景色がある。 燃え盛るような赤い夕日をバックに、あの人が立っていて、数メートル離れた私がその光景を眺めていることも気づかず私に背を向けていた。 普段は大きく頼りがいのあるその背中が、真っ直ぐ凛とたっているその体が、赤い光に包まれ…

【お題短編】ひと

お題:足す、亜目、伍する 「残念ながらあなたは人ではないようです。」 生真面目な顔をした男は私にそう言った。 「ちょっと、意味がわからないんですけど。」 私も真面目な顔でそう返した。 「最近、ホモ・サピエンスに分類されているものによく似た生き物…

【短編】働きアリ達の世界を

たんっ。と軽やかな音を鳴らして跳ね上がる。 頬を撫で、髪の隙間を通り抜けていく風が心地いい。 地球に引っ張られるままに近くのビルへと降り立ち、直ぐにまた跳ね上がる。 目的地もなく、行きたいままに適当にビル街を跳ね回っているとビルの隙間に見知っ…