2024-01-01から1年間の記事一覧
1歩踏み出す度に、足元でカサリと音が鳴る。 カサリ。 カサカサ。 カサカサリ。 その道本来の姿を覆い隠している落ち葉たちから視線を上げて前を見た。 真っ直ぐ伸びている黄色っぽい落ち葉の絨毯。 それに寄り添うように両端には随分と寒そうになった木々が…
空気の澄んだ満点の星空に浮かぶ 大きな満月 冷たい風が吹いて木々が揺れると、ふわりと甘くて優しい香りが辺りに広がった。 「ねぇ、お月様にも金木犀があるって知ってた?」 目の前で優雅に紅茶を嗜みながら、彼女は唐突にそんな事を言った。 「宇宙には酸…
はぁっと吐き出したため息が、白い煙となって空へと上がっていく。 肌を刺す風たちは悪戯に髪を巻き上げて通り過ぎる。 ぼんやりと眺める青空は高く澄み渡っているのに、その下にいる俺たちはなんだかどんよりとしたものに浸ってしまっている。 若い頃はがむ…
鈴を転がすような虫たちの声が響き渡る世界。 空を見上げ映るのは、ゆったり流れる雲の隙間から現れる大きな満月。 そして、それを見上げる私の前にはそれらを綺麗に写し取った大きな湖が広がっている。 そよ風が吹く度にゆらゆらと世界が揺れて境界がぼやけ…
お題:ペンタス 宇宙 青と赤と黒が絶妙に混ざり合う見惚れるような夜空。 そんな空いっぱいに広がる星々は息を飲むほど美しく、ふらりと両手を伸ばして手の中にそっと光を閉じ込めた。 引き寄せて開いたその手の中には、当然ながらなにも入っていなくて少しが…
お題:信号、レモン 『通りゃんせ。通りゃんせ。』 信号機から鳴り響く聞きなれたメロディに、止まっていた人達が一斉に動き出す。 『ここはどこの細道じゃ。天神様の細道じゃ。』 空は雲ひとつない快晴で、アスファルトから陽炎が揺らめいている。 手元にあ…
私は、あなたのそばにいつもいる。 あなたがこの世に産まれ落ち、「おぎゃあ」と声を上げたその時に私は産まれた。 小さな体全部を使って「ここに居るよ」と叫んだあなたに、私は意味もわからず涙を零した。 それからはずーっと一緒。初めての寝返りも、初め…
涼しい風が吹き抜けて、尊き青が広がっていく。 ベッタリ張り付いたような薄い雲がゆっくり流れる。 「天気が良いねぇ。」 のんびりとした声に振り返り笑みをこぼした。 「ひとみも絶好調だね。」 「当然でしょう?」 にこにこしながら隣に並ぶ彼女に 自然と…
澄みわたるような美しい青をどんよりとした雲が覆い隠している。 いつもは目が開けられないくらい眩しい空からは優しすぎる淡い光が降り注いでいる。 「何してるの?」 いつの間にかそばに来ていた、ゆきに「見て。」と頭上を指させば彼女は「曇ってるねぇ。…