おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

2021-01-01から1年間の記事一覧

【短編】椿の花を

小さな頃。通学路にいつもたっているお姉さんがいた。 お姉さんはいつも道脇にある椿の木を見ていた。寒くなってきて、赤い花を咲かせる頃になるとお姉さんはそれは嬉しそうに微笑んでいたのをよく覚えている。 そして、花が落ちる頃になると白くて細いその…

広い空 続く大地

そっと下ろした足の裏に伝わる柔らかい土の感触 日に照らされた土はほんのり暖かい じんわりと伝わるその熱にほぅ。と息をひとつ 見上げた空は 高く ひろく どこまでも青かった 雲たちはゆうゆうと流され さわさわと風が頬を撫でていく 気持ちがいい こんな…

雨も私たちもみんなみんな

空で産まれた水滴たちが 地上へと降り注がれる ザァーっと音を立てて降り立った水滴たちは 地球に深く深く浸透してき 思い思いの時間をかけて海や川へでる そうしてギラギラと照らす太陽の光に導かれて 上へ 上へ 帰っていくのだ 思い思いの月日をすごして …

【短編】その香りの導く先に

温められたポットにお湯を注ぎ2分ほど蒸らす。 お気に入りのティーカップを戸棚から出して、そこに抽出された紅茶を注いでいく。 華やかな香りがふわりと辺りに広がった。 心安らぐやさしい香りに満たされる。 「香りと記憶は深く結びついているらしい。」 …

【短編】川の上にいるものは

ジジジジジッ。ミーンミンミンミンミン。 セミのコンサートが開催される中、私と仲ちゃんは2人カウンターに座っている。 太陽はサンサンと降り注ぎ世界に熱を送り続け、その熱がじわじわと入り込んでくるガラス張りの建物。 そこに私と仲ちゃんはかれこれ3時…

私は見つめ直す。どう生きたいのか

気がつけば、仕事に忙殺されている。 働いて、働いて、働いて 休みの日は泥のように眠りについて。 月日がものすごい勢いで過ぎ去っていく。 ふと我に返り呆然とする 一体、何をしているのだろう? 私がしたかった事は一体なんだっただろう? そんな時、とあ…

ここに

私は何を書きたいんだろう 何を残したいんだろう この場所に この世界に 衝動的にやってくる 「書かなきゃいけない」という衝動は 一体、どこからやってくるのだろう 知らせたい 知って欲しい 見て欲しい 感じて欲しい 私がそう思っているのだから間違いなく…

私の課題

やりたい事がたくさんある。 やらなきゃいけないこともたくさんある。 あっちも、こっちもとバタバタ過ごして 気がついたら夜になっていて、沈むように眠りに落ちる。 1日、2日。 なんだか充実した毎日を送っている気になっている。 3日、4日 少し疲れてきた…

書きたいと思った時 身体のどこからかそれが溢れ出して、目の前の紙や画面に流れ込んでいく時と その思いがグルグルと身体の中で渦巻くだけで、全く出てきてくれない時がある。 前者は良い。するすると体から抜け出た思いや世界が形を作り目の前に現れてくる…

【短編】気になるあの子は

隣のクラスの鈴木さんは、猫をかぶっている。 そして、どうやらそれは他の人には見えていないらしい。 「暑くないの?」 「え?」 サンサンと降り注ぐ太陽の中、中庭のベンチに座っている彼女に声をかけてみた。 他クラスの男子がちょっかいをかけにいくほど…

人はそれを瞑想と呼ぶ

例えば、 気づいたら夜になっていて部屋が真っ暗になっていたり 光の差し込まない空間に灯りを持たずに入ったり 特にすることがなくて目をつぶったり そんな真っ暗な空間でボーッとしていると 次第に自分が溶けていくような気分になる 染み出して、滲んで、…

【短編】雨中の花

淀んだ空から雨粒がパラパラと落ちてくる。 いつもなら聞こえる元気な子供たちの笑い声や、鳥たちの歌は聞こえず、サーーッ。という雨音が世界を包んでいる。 心做しか視界もなんだか白く濁っているような気がする。 くるり。 そんな中、赤が踊っている。 く…

生きる上で必要なこと

物語が好きで 想像するのが好きで 表現することが好き こんなだったら、あんな風なら もしも、例えば、 考えれば考える程世界は広がっていって 終わる事の無いその世界に夢中になれる もし私が書くことをやめたら 考えることを、表現することをやめてしまっ…

無理な事なんてきっとない

目をつぶって考えてみる。 そこは誰もが満たされている世界。 小さな愚痴や不満はあれど、基本的に満たされた生活をしている。 みんなが生き生きと活動し、たまに俯いて動けなくなってしまった人がいても周りからはたくさんの手がさしのべられる。 誰にだっ…

奇跡のような私たち

時折ふと、自分の見ているものが何なのかわからなくなる時がある 自分の見聞きしているものはどれくらいが真実なのか 当たり前のようにみんながソレを見ているものだと思い込んでいるけれど果たしてそれが本当に同じものなのか 今、私の見ている「赤」はみん…

いい日が始まる

大きく深呼吸をして 両手を広げ思いっきり上へ伸ばした 見上げた空は高く高く どこまでも青い空が広がっている 視界の端では 青々とした木々が風に揺られ踊っている 目を閉じれば ザァー っと風の駆け回る音 どこかで チリン と鈴がなり どこからともなく 楽…

【短編】その場所はあなただけのもの

真っ白いその空間に彼女は1人たっている。地面は薄く水で覆われていて、時折ピチョンッと跳ねる音がしていた。 「・・・・・・。」 彼女は、ぼぅっと足元を見つめている。自分の足裏に微かな水の揺らめきを感じながら、己の足元を見つめている。 「やぁ!酷い顔だ…

私よ心に刻め。しっかりと

私は人見知りだ 加えて、極度の面倒くさがりでもある 人と足並みを合わせるのが嫌だって訳では無いけれど、疲れるなと思ってしまうし 集団行動も楽しくて好きではあるけれど、人数が増えれば増えるほど気を使うことが増えて面倒だなと思う 問題事が起きた時…

その先には

「もーーーいーーかーーい?」 高くそびえる杉林の中。幼い声が辺りに反響している。 「まーーーだーだよーーー!」 杉林を分断するようにまっすぐひかれた砂利道が ジャッ。ジャッ。ジャッ。 と軽い音を立てている。 「もーーいーーかーーーーい?」 砂利道…

姿なき訪問

朝起きて、カーテンを開ける 太陽の柔らかい光が部屋の中へと降り注ぐ ひとつ、大きく深呼吸して リビングにある大きなソファーへとダイブする。 何の変哲もない天井を見つめてボーッとしていると、窓の外から 「ホーホケキョ。」 と声がする。 「ホケキョ。…

【短編】おともだち

「幽霊になったら何がしたい?」 唐突にかけられた声に、チラリと横に座る男に目を向ける。 「・・・・・・。」 「え?無視?無視は酷いよ!」 ニコニコ笑う男から視線を本に戻すと、男は隣で大袈裟に身振り手振り使って邪魔してくる。 「勝手に隣に座らないでくれ…

日常の非日常

ごおぅん。ごおぅん。 一定の間隔で、低い音が響いている。 ごおぅん。ごおぅん。 低い低いその振動は私の体をビリビリと揺らしている。 ごおぅん。ごおぅん。 いま、私はどこにいるんだろう? なにをしていたんだっけ? ごおぅん。ごおぅん。 チカチカとま…

お昼寝

青く透き通るお空からサンサンと太陽が降り注ぐ ベランダの窓を開けて、その太陽を家の中へと招き入れた。 照らされている畳の上に寝そべり、大きく深呼吸をひとつ。 視界に広がるのは、綺麗な青と ゆるりと移動していく白い雲たち どこからが聞こえる、鳥た…

【短編】鳥と黒猫とお月様

星が輝き、三日月が見守る中に鳥籠がひとつ。 ゆらゆらと揺れている。 鳥籠の中には 黄色い体に鮮やかなオレンジの嘴と羽をもった鳥が1羽。 鳥籠と共にゆらゆらと揺れている。 その下には、揺られる鳥籠を見つめる1匹の黒猫。 「ねぇ、そこは狭いでしょう?…

はじまり

瞼をゆっくりと持ち上げる 視界に入ってきたのはぼんやりとした世界。 薄暗く、ゆらゆらと光が揺れている。 とっとっとっ 様々な音が聞こえる中で一際大きく聞こえている一定のリズムで刻まれた音にとてつもない安心感を覚えてゆっくりと瞬きをした。 ときお…

私だけの大切な

順位をつけるのが苦手だった。 大切なもの すきなもの おきにいり 私の中にそれは沢山あって、世界にもそれは溢れかえるほど沢山あるのに みんなが言う 「どれが1番いい?」 と。 1番ってなんだろう。 何にでも、いい所と悪いところがあるのに。 どうやって1…

【短編】ときはなつ

青。 蒼。 碧。 あお。 真白くそびえ立つソレを睨みつけていた数分前とは打って変わって僕はひたすらに腕を動かす。 黄色に、 赤に、 白。 みどり。 時々、黒。 上から下へ。 円を描いて。 叩きつけて、 はね上げる。 一瞬足りとも、脳内に焼き付いたソレを…

ゲームのはなし

私は飽き性である。 なので、ゲームはやるよりも見ている方が好き。 なぜなら、レベル上げやらなにやら細々していることが面倒くさく飽きてしまうからだ。 私は壊滅的にゲームに向いていない 最初の1、2週間のめり込んでやり込んで、ストーリーが進まなくな…

【短編】今年もやってきた幸せ

大きく息を吸って、ゆっくりと吐く 爽やかな空気と華やかな香りが肺いっぱいに満たされる。 目を開くと瞳に映るのは、雲ひとつない真っ青な空の下に広がる赤や白。 そしてたくさんの人、人、人。 ウイルスの影響で去年よりは少ないとはいえ、それでも朝から…

書店

壁一面に並ぶたくさんの書籍をひとつひとつ見回して歩く。 恋愛 冒険 感動 サスペンス 魔法に化学 本は異世界への扉であり、窓である。 私の知らない世界を、常識を見せてくれる。 たくさんの想いを私の中に溢れさせてくれる。 様々なことを思考して、想像し…