おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

【短編】雨中の花

 

 

淀んだ空から雨粒がパラパラと落ちてくる。

いつもなら聞こえる元気な子供たちの笑い声や、鳥たちの歌は聞こえず、サーーッ。という雨音が世界を包んでいる。

心做しか視界もなんだか白く濁っているような気がする。

 

くるり

 

そんな中、赤が踊っている。

 

くるりくるり

 

覚めるほどの綺麗な赤が。

 

パシャンッ。パシャパシャ。

 

黄色と一緒に踊っている。

 

楽しそうに、あっちへパシャンッ。

くるくるり

 

魅入られるようにその光景をボーッと見つめていると、ソレは不意にこちらへと振り向いた。

 

「雨、楽しいねぇ。」

 

輝かんばかりの笑顔を向けられて、途端に世界は青く染まる。

 

「綺麗だねぇ。」

 

キャラキャラと笑う声が水滴に反射してキラキラと光り出し、青々とした木々が風に吹かれて、ザーッとその光を振り落とした。

途端に嬉しそうな声が辺りに響きわたり、くるりくるりと赤が舞う。

 

「ね!ママ!」

 

ニコニコと笑う子供は真っ赤な傘を回して、黄色い長靴を水たまりへと振り下ろし楽しそうに、嬉しそうに笑っている。

 

「えぇ。本当に。」

 

微笑みながら子供へと手を伸ばし、手を繋ぐ。

 

( 少し憂鬱になりがちな雨の日も、たまにはいいものだわ。)

 

くるりくるり

パシャンッ。パシャンッ。

 

しとしと降り注ぐ雨の中、赤と青の綺麗な花が2つ。

楽しそうに、嬉しそうに踊っている。

 


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