【宝物・レモンクリーム・水】
そっと窓へと手を向ける
外は雨が降っていて、水の筋がたくさん着いていた
つーっとスジをなぞるように指を動かす
ガラスに反射して、私の姿も窓に写っている
雨に降られ、水に濡れた私が
お気に入りのレモンクリームのワンピースも
朝から長い時間をかけてセットした髪も
全部、全部、びしゃびしゃだ
窓の向こうで水に濡れた私は
酷く冷めた目でこちらを見ている
「ばかみたい」
音もなく口が動いた
そしてすぐ、ぐしゃりと顔が歪んだ
「わかってるもの。」
自然と言葉が漏れて視界を覆った
そんな自分を見たくなかった
そんな私は知らない方がいい
がちゃり。
宝箱の中に押し込んで鍵をかけた
ゆっくりと目を開いたその子は晴れやかな顔で
「行ってきます」と出かけていく
誰もいなくなったその部屋に鍵のかかった宝箱だけがポツンと残った