おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

お昼寝

 

青く透き通るお空からサンサンと太陽が降り注ぐ

 

ベランダの窓を開けて、その太陽を家の中へと招き入れた。

照らされている畳の上に寝そべり、大きく深呼吸をひとつ。

 

視界に広がるのは、綺麗な青と

ゆるりと移動していく白い雲たち

 

 

どこからが聞こえる、鳥たちの囀りと

遠くから聞こえる、子供達の笑い声

 

太陽に光に包まれたからだは、じんわりと暖められていき、ゆっくりと瞼が閉じていく

 

落ちていく意識の中ふと、「幸せだなぁ」と思った。
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【短編】鳥と黒猫とお月様

 

 

星が輝き、三日月が見守る中に鳥籠がひとつ。

ゆらゆらと揺れている。

 

鳥籠の中には

黄色い体に鮮やかなオレンジの嘴と羽をもった鳥が1羽。

鳥籠と共にゆらゆらと揺れている。

 

その下には、揺られる鳥籠を見つめる1匹の黒猫。


「ねぇ、そこは狭いでしょう?」

 

黒猫は鳥籠の中にいる鳥へと何度目か分からない問いかけをする。

 

「生まれてからずっとここに居るから、狭いとか考えた事ないよ。」

 

鳥も同じように何度目か分からない答えを返した。

 

「外の鳥たちはね、お空をうーんと自由に飛び回るんだよ。見たの。あなたのような鳥があのお月様のように空へ浮かんでいくのを。」

 

黒猫は夜空に浮かぶ三日月を見つめて自分の見た事を思い出しうっとりとする。

 

「すごくね、きれいだった。」

 

反対に鳥は興味無さそうに。

 

「へぇ。そうかい。それはすごいね。」

 

と返しただけだった。

 

「あなたはずーっとそこにいるけれど、もっと自由に動き回りたいって思わないの?」

 

黒猫は不思議そうに鳥へと尋ねた。

 

黒猫は自由が好きで。動き回ることが大好きだったから、鳥が一日中狭い籠の中でジーッとしているのが心底不思議だったのだ。

 

「僕はじっとしてるのが好きだからね。こうしてゆらゆらと揺られているのがとても落ち着くのさ。」

 

ゆらりゆらりと揺られている鳥籠の中で鳥はそう答えた。

 

「ふーん。変なの。私ならきっと耐えられないのに。」

 

「僕からしたら、そんなに忙しなく動き回ってなんで疲れないんだろうって思うよ。そっちの方が僕には耐えられないね。」

 

納得出来ないと思いっきり顔に書いてある黒猫に鳥はくすくす笑いながらそう言った。

 

けれども黒猫は諦めずにもう一度問いかける。

 

「でも、1度くらいはそれを壊して出てきてみたいって思わない?」

 

「君は1度でもその首に巻き付けたものを壊そうと思うかい?」

 

質問に答えず問いを返された黒猫は、ぱちくりと目を瞬いた。

自分の首にぐるりと巻きついた淡いピンク色の首輪。

可愛いあの子が黒猫に似合うと黒猫にくれた大切で大事なもの。

 

「壊すわけない!たった一度だって壊そうなんて思わないよ。これは大切だもん。」

 

大きな声で鳥へと返すと、鳥は

 

「それと同じことさ。」

 

と笑った。

 

それを聞いて黒猫は諦めたように地面へと伏せる。

しかし、今度は鳥が黒猫へと問いかける。

 

「それにしても、今日は嫌に粘ったね。どうしたの?」

 

不思議そうにかけられた声に黒猫はゆっくりと体を持ち上げた。

 

「だって、本当にきれいだったの。青い空につーって上がっていく鳥たちが。」

 

そう言って黒猫は夜空を見上げる。

 

「あなたはお月様とおんなじ色をしてるでしょう?

だから、きっと、あなたが浮かんでいったらもっともっと綺麗なんだろうなぁってそう思ったの。」

 

そして、目の前の鳥籠の中で揺られている鳥へと目を向ける。

 

「私はそれを見てみたいなぁって思ったの。」

 

まっすぐ見つめられた鳥はパタパタと少し羽を動かし、そして、少し照れくさそうに

 

「それは、光栄な事だね。」

 

と微笑んだ。

しばらく羽をパタつかせてから鳥が再度口を開く。

 

「ねぇ、知ってるかい。僕はここで揺られているのがとっても気に入っているけれど、それと同じくらいこうやって君とおしゃべりするのも好きなんだ。

 

それを聞いて黒猫はぱちくりと目を瞬かせそれからにっこりと笑う。

 

「それは、とても光栄な事ね。」

 

 

キラキラと瞬く星々に囲まれた中。

 

ゆらりゆらりと揺れる鳥籠とそれにより沿うように座る黒猫の楽しそうなお喋りを今日も

 

お月様が優しく見守っている。


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はじまり

 

 

瞼をゆっくりと持ち上げる

 

視界に入ってきたのはぼんやりとした世界。

薄暗く、ゆらゆらと光が揺れている。

 

とっとっとっ

 

様々な音が聞こえる中で一際大きく聞こえている一定のリズムで刻まれた音にとてつもない安心感を覚えてゆっくりと瞬きをした。

 

ときおり遠くの方から届く、くぐもった心地よい振動がくすぐったくて、幸せで手足をパタパタと動かしてみる。

 

振動が一段と大きくなって、心地よい振動にゆっくりと瞼が閉じてゆく。

 

「はやく、会いたいわ。私の赤ちゃん。」

 

意識が落ちていく寸前、優しく暖かい振動が私を包み込んだ気がした。

 


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私だけの大切な

 

 

順位をつけるのが苦手だった。

 

大切なもの

 

すきなもの

 

おきにいり

 

私の中にそれは沢山あって、世界にもそれは溢れかえるほど沢山あるのに

みんなが言う

 

「どれが1番いい?」

 

と。

 

1番ってなんだろう。

何にでも、いい所と悪いところがあるのに。

どうやって1番を決めてるんだろう?

私は全部好きだけどな。

全部好きじゃダメなのかな。

 

 

人は優劣をつけたがるもので、

何かにおいて競うのが好きで

順番をつけたがる

 

 

誰かが言った。

【お前は甘い。現実を舐めてる。】

 

誰かが呆れた。

【競争心が無さすぎる。上を目指そうとは思わないの?】

 

誰かが怒った。

【いい子ちゃんぶるな。八方美人かよ。】

 

誰かが哀れんだ。

【君は執着心が無さすぎる。人として何か欠けてるみたいだ】

 

 

わからない。

わからない。

わからない。

 

 

楽しいだけじゃダメなのかな?

みんな優しいね。暖かいねって

それじゃあダメなの?

たった一度きりの人生なのに。

 

人生は辛く苦しい

 

 

それって一体誰が決めたんだろう?

 

楽しく幸せでのほほんとお気楽気分で

 

それの一体どこがいけないことなんだろう?

 

 

たった一度の人生だよ?

 

自分だけの、自分のための人生だ。

 

 

なんでその生き方を他人にアレコレ指図されなきゃいけないの?

 

そんな狭い中に無理やり収まろうとするから辛くて苦しいんじゃないのかなぁ?

 

飛び出してみればいいのに。

きっと自分が思っているよりも簡単にソレは壊れる。

 

考え方ひとつ。

捉え方ひとつ。

 

少し視点を変えるだけでもきっと違う。

 

助けてくれる人は思ったより周りにいてくれて

手を伸ばせば意外と誰かが手を取ってくれるもの。

 

 

踏み出すその1歩はきっととてつもなく怖いかもしれないけれど、踏み出しちゃえば案外なんともないかも。

 

自分だけのものだよ人生は。

どう生きるかも、どうあるのかも。

全部、全部、自分で決めていい。

 

 

 

だから、わたしはこれでいい。

 

 

 

 

【短編】ときはなつ


青。

蒼。

碧。

あお。


真白くそびえ立つソレを睨みつけていた数分前とは打って変わって僕はひたすらに腕を動かす。

黄色に、

赤に、

白。


みどり。

時々、黒。

上から下へ。

円を描いて。

叩きつけて、

はね上げる。

一瞬足りとも、脳内に焼き付いたソレを消さないように。

瞬きもせず、薄れる前に。

しかし忠実に再現する

重ねて、削って、混ぜ込んで。

なにかに取りつかれたように一心不乱に練り上げる。

 

・・・やっと1つ。
息を吐く。細く長い息だ。

 

じっと己の吐き出したものを見つめ、呼吸をゆっくりと深く繰り返す。

 

「ねぇ、それ何?」

 

不意にかけられた彼女の声。
いつからいたのか分からないが、そんな事は大した問題じゃない。

 

「知らない。」

 

キャンパスから目を離さず、応える。

 

「急に湧いてきたんだ。溢れて来たから書き留めなきゃと思って。垂れ流しにするには惜しい。」

 

じっくりと、キャンパスを見つめる。
彼女の言葉に答えてはいるが、僕の頭は目の前のソレでいっぱいだ。

 

「まるで貴方がもう一人いるみたい。」

 

「それはそうだろう。これは僕が吐き出したんだから。これは僕だよ。」

 

どうしてだろう。
正確に書き留めたはずなのに。気持ちが悪い。
歪だ。こうではない。これではダメだ。
なんだ?何が足りない?

 

ぐるぐると思考を回して、必死に違和感を探るが、
モヤモヤとした形のないものが溜まって行くだけで一向に捉えることが出来ない。
グッと眉間がよっていき、親指の爪が人差し指の腹を弾く。何度も。何度も。

 

次第に足が落ち着きを無くし、大きな舌打ちが響く。

と、同時に。視界に彼女が映る。
彼女はゆっくりとした足取りで、もう1人の僕へと近づいた。

 

「綺麗だね。こんなにもぐちゃぐちゃに混ざってるのに、なんでこんな綺麗なんだろう?」

 

穏やかに微笑みながら、彼女は撫でる仕草をした。
キャンパスから外れなかった視界が彼女へと移る。
白いワンピースを、纏って僕の大好きな瞳を溢れさせる。

 

「でも、ちょっと窮屈そうだね。もっと広がりたいんじゃない?」

 

そう言って僕を振り返る。
真っ直ぐと向けられた視線は、楽しそうに混ぜられてキャンパスのすぐ後ろの壁を指し示す。

 

「・・・ね?収まりきらなくて溢れ出てる。」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

 

彼女の言葉に、視線に促されるように僕はもう一度キャンパスに向かった。

 

 

 

 


「本当に綺麗。あなたの作品はなんでも好きだけれど、コレは特に好きかも。」

 

僕の胸にもたれかけながら彼女はうっとりと呟く。
そんな彼女が愛おしくて僕は腕を回して抱きしめた。

 

「僕もだよ。今までの作品の中でこれが一番好き。」

 

「ふふ。お揃いだね?」

 

僕の言葉に嬉しそうに彼女が振り返る。

 

「あぁ。お揃いだ。」

 

僕も応えて彼女にキスを送る。
そうしてもう一度2人で出来上がった作品に目を向ける。

 

初めに描いたキャンパスから広がるように、壁一面に描かれた『 あお』。

複雑に混ざり合い、暴れ回り、喚き散らすソレを柔らかく包み込み、溶け込むように

『 白』が差し込む。


そう、綺麗に決まってる。
僕がどんなにぐちゃぐちゃでも、ドロドロに溢れ出しても君が

 

ぎゅっと縋り付くように腕に力を込めると彼女はくすくすと笑う。

 

「ふふ。幸せだねー。」

 

「・・・あぁ。」

 


『 白』が僕を幸せにしてくれるんだ。




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ゲームのはなし

 

私は飽き性である。

なので、ゲームはやるよりも見ている方が好き。

 

なぜなら、レベル上げやらなにやら細々していることが面倒くさく飽きてしまうからだ。

 

私は壊滅的にゲームに向いていない

 

最初の1、2週間のめり込んでやり込んで、ストーリーが進まなくなってくると「もういいか。」と辞めてしまう。

 

そんな私が、最近ハマっているゲーム。

 

ニーア  リィンカーネーション

 

ニーアシリーズというもののモバイル版らしいが私は今作初めて手をつけてみた

 

結果    面白い

 

まず、雰囲気が好き。

神秘的な、排他的な、どこか寂しげな独特な雰囲気が私の好みにバッチリとハマり。

 

所々に展開される絵本のような影絵のようなグラフィックに心引き込まれ。

 

そして、謎が謎を呼びどんどんと深みへおとすようなストーリー展開にずっぽりとはまってしまったらもうダメで

 

あぁ、なるほどこれが沼か。

 

今までにないハマり具合に自分でも驚いてしまう

 

スマホ片手に気がつけば辺りは真っ暗で

時間がどんどん吸い取られている気しかしない。

 

けれど心は水を得た魚のように生き生きと輝いているのを感じる。

面白いもの。不思議なもの。綺麗なもの。

 

私の心を潤してくれる素敵なゲームとの出会いに心からの感謝を込め

私は今日もスマホへと時間を捧げています。
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【短編】今年もやってきた幸せ

 

 

大きく息を吸って、ゆっくりと吐く

 

爽やかな空気と華やかな香りが肺いっぱいに満たされる。

 

目を開くと瞳に映るのは、雲ひとつない真っ青な空の下に広がる赤や白。

そしてたくさんの人、人、人。

 

ウイルスの影響で去年よりは少ないとはいえ、それでも朝からひっきりなしに人並みは途切れない。

 

仲良さそうに歩く老夫婦

 

キャラキャラと元気に走り回る子ども達

 

集まる人だかりにふらりと寄ってくる人や

 

仲良さげに談笑する若者たち

 

 

老若男女、様々なひとが訪れている。

 

そして、みな一様に天を仰ぎその赤や白、空の青とのコントラストを楽しんでいる。

カメラや携帯を掲げあちらこちらでシャッター音が響いている。

 

明るく、楽しそうにみんな輝くように笑っている。

 

心の中にじんわりと暖かなものが溢れだし、自然と口角があがり「ふふふっ。」と空気が漏れだした。

 

見上げた空ではギラギラと太陽が輝いて私達をサンサンと照らしている。

 

「ふふっ、ふふふ、あははは。」

 

人々の溢れ出す暖かく、跳ねるような気持ちが伝わって自然と私もとても愉快な気持ちで満たされる。

 

楽しくて、暖かくて、愉快で、

 

そして、とっても幸せだわ。

 

 

溢れ出た想いのままに私はふわりとふわりと飛び上がる。

眼下に広がる幸せな光景に、私は大きく宣言する

 

「さあ、春が来たわよ!!!」

 

ぶわりと舞い上がる梅の花吹雪に、人々から大きな大きな歓声が上がった。


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