おはなしの森

日々を過ごし感じること、思い浮かぶこと。世界はたくさんの物語で溢れている。

希う

 

 

優しい人でありたい

 

困っている人に手をさしのべられるような

苦しんでいる人に寄り添ってあげられるような

他者を思いやり、尊重できるような

 

人は誰しも特別なものだと

そんな当然のことを当たり前のように振る舞える

 

そんな、いい人でありたいと願っている

 

けれど実際は

 

自分のことで精一杯で、

誰より何より自分が一番可愛くて大事で

 

カッと込み上げた怒りをコントロール出来ずに

他者を傷つけ貶める

 

その後、我に返って自己嫌悪して傷ついて泣いて

やっぱり自分を可愛がりたいだけのやな奴だって

自分自身に刃を突き立てる

 

「優しさ」は誰もが持っていて魂にそれは根強く居座っているのに

それを行使する事は恐ろしい程に難しい。

 

誰かに「優しく」なるには、まず己が満たされて余裕がなければ出来ないからだ

 

そうして、己に余裕を持つことはとてつもなく難しい

 

そっと見下ろした両手は自分を支えられるのかも怪しいくらい小さくて

 

それでも声が響いている

 

悲しくて、苦しくて、悲痛な 叫び声が

 

辺り一面に響いているのだ

 

助けたい  何とかしたい  支えてあげたい

 

気持ちばかりが先行しているだけで、みんなみんな指の間からすり抜けていってしまう

 

それでも私は手を伸ばす

少しでも、ほんのひとかすりだけでも

 

余裕がなくて「優しく」するのが下手くそな私でも

 

どうか、どうか

 

 

世界がしあわせになりますように

 


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【短編】世界はふしぎで溢れてる

 

「ねぇ、何してるの?」

 

かけられた声に優里が振り向くと、そこには同い年くらいの女の子が不思議そうにこちらを見ていた。

優里にはお友達が沢山いるけれど、その子は会ったことがない子だったので優里はキョトリと1つ瞬きをして首を傾げる。

 

「だあれ?」

 

「私はミチ。ねぇ、何してるの?」

 

ミチと名乗った女の子は興味津々といった様子で、しゃがみこむ優里の側へとやって来る。

 

「あのね、不思議だなって見てたの。」

 

「ふしぎ?」

 

しゃがみ込んだまま答える優里の傍に、ミチは不思議そうに同じようにしゃがみ込んだ。

そこには黄色いお花がひとつ。風にゆれている。

 

「お花は砂の上に咲くでしょ?ママもお花育てる時に砂をお店で買うのよ。でも、この子は砂がないのに咲いてるの。なんでかなぁ。」

 

そう、ここは住宅街。

花壇や野原に咲くお花とは違い少女たちの目の前で揺れる花は硬い歩道から住宅の塀に沿うようにニョッキりと顔を出していた。

 

優里はおかあさんのお手伝いでお花を植えたことがある。

お花のごはんがいっぱい入っている砂の中に種を埋めて水をあげるのだ。

種を植えた時にシャベルでポンポンしてはいけない。お花が顔を出す時に「重いよー」と泣いてしまうからだとお母さんが教えてくれた。

 

けれども目の前で揺れるこの黄色いお花は硬い地面からニョッキりと顔を出している。

それが優里には不思議でしょうがなかった。

 

「ほんとだ。不思議だね。」

 

ミチも隣で目を大きく開いて花を見つめる。

 

「ね!不思議だね!!」

 

優里はミチが同じように驚いて、共感してくれたのが嬉しくてにっこりと笑ってミチを見た。

 

「うん!不思議!!」

 

ミチも嬉しそうに優里ににっこりと笑いかける。

そして

 

「わたしもね、不思議なこと知ってるよ。優里ちゃん教えてくれたから、わたしも教えてあげる。」

 

と、言った。

優里はますます嬉しくなって、「ありがとう!」と応える。

するとミチは真っ直ぐと上を指さした。

 

「空の上には宇宙があるんだって。知ってる?太陽もお月様も宇宙にあるの。」

 

「知ってるよ。テレビとか本で見たことあるよ。」

 

ミチの問にコクリと頷いて応える。

 

「絵本もさ、テレビもさ、宇宙って真っ黒なのにどうしてお空は青いんだろう?夜はちゃんと真っ黒なのに。」

 

不思議そうに首を傾げるミチの話しを聞いて、優里もパチクリと瞬きをする。

そして、空を見上げ

 

「ほんとうだ、ふしぎ。」

 

と目を見開く。

 

「ね!不思議でしょ!?」

 

嬉しそうにミチがにっこりと優里に笑う。

 

「うん!!不思議だね!!」

 

優里も興奮したようにミチに笑いかけた。

 

不思議、ふしぎ。不思議!!

 

と2人はケタケタ笑いながら身振り手振りで語り合う。

どれくらいそうしていただろうか?

不意に

 

「優里ー?どこー?」

 

と、お母さんの声がした。

 

「あ、お母さんだ!おかあさーーん!!ここだよーー!」

 

優里は母親の声がする方に呼びかけならがら走りよる。

すると、お母さんは「優里!いた!」といって優里を抱きしめる。

 

「もう!すぐフラフラするんだから。ほら、手をつなごう?優里がいなくなったってお母さんすごく怖かったのよ?」

 

お母さんが困ったようにそう言ったので優里は悪い事をしたと「ごめんなさい」と素直に謝り手を繋ぐ。

するとお母さんは呆れたように笑いながら、

 

「こんなとこで何してたの?」

 

と聞いてきた。優里はさっきまでの話と新しく出来たお友達をお母さんに伝えようと興奮しながら伝えようとする。

 

「あのね、あのね、ミチちゃんが・・・・・・あれ?」

 

しかし振り返ったその場所には誰もいなくて黄色いお花がゆらゆら1つ揺れているだけだった。

 

「え?なんで!?すごい!!ふしぎ!!お母さん不思議だね!!」

 

パァァァッと顔を輝かせて、興奮そのままに母親に抱きつくと、お母さんは「はいはい。そうねー。不思議ねー。」と笑ってくれる。

 

「優里は不思議を見つける天才ね。」

 

そう言って優里の頭を撫でて、帰り道を手を繋いで歩いていく。

優里もお母さんの手に引かれてにこにことご機嫌で歩いていく。

 

楽しそうに笑う優里の声と、お母さんの声が夕暮れの住宅街に染み渡る。

 

「ね!お母さん!!世界はふしぎがいっぱいね!!」

 

 


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嬉しい誤算

 

 

Netflixのオリジナル海外ドラマにはまった。

 

気がついたら1日が終わっていることが多く、ちょっとしたタイムトラベル気分を味わっている。

 

人を引き込み、熱中させる作品

 

私もいつか、誰かにタイムトラベル気分を味合わせるような作品が作りたいなと思う今日この頃です。

 


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コロナによる自宅療養中の死亡について

 

私たちを悩まして、苦しめているコロナウイルスの自宅療養中の死亡がニュースで大変目立っている。

 

自宅療養中の急変による死亡を防ぐために、見守りシステムを作れないものなのだろうか?

 

例えば、犬や猫ちゃんを留守中に見守る機械とかを使って

倒産などで職を失ってしまった人を集めて患者さんを見守るシステムとか。。。。

 

プライバシーの問題もあるので、見守るのは寝室だけで要望がある人だけとかにして。。

 

一人暮らしの人は、助けを求める人が近くにいないって相当怖いのではないかと思う。

問題は、きっと沢山あるし私は頭が悪いのでこれはきっといい案ではないけれど

 

助けられる可能性が少しでもあげられる

自宅療養に対する不安が少しでも削れるといいな。

 

こんなこと、私がごちゃごちゃ考えてもしょうがない事だと思うし

きっと上の人達も何かしら案を一生懸命考えて下さっているのだと思う

 

けれど考えずには居られない

 

 

 

どうか早く、怖いことや不安な事に思考を乗っ取られない日々がやって来ますように。

 


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【短編】ワスレモノ

 

風に吹かれ緑が揺れている。

緑が揺れると同時にチラチラと木漏れ日の光も踊り、どこか遠くで歌う鳥たちの声が響きあう。

 

思わず、ため息が漏れた。

 

大きく力強く存在しているこの木は、一体いつからここにいるのだろう?

きっと、私が生まれるよりもずっとずっと・・・

 

「おや。珍しいお客さんだねぇ。」

 

のんびりと響いたその声にハッとして振り返るとそこには小さくて可愛いらしいおばあちゃんがにこにこと微笑んでたっていた。

 

「あ、こ、こんにちは。」

 

口を開けて惚けるように立っていたのを見られていたのが恥ずかしく慌てて挨拶をする。

 

「はい。こんにちは」

 

にこにこと笑うおばあちゃんは目の前にある木を優しく撫でている。

なんとなく気まずくて視線をウロウロとさ迷わせるているとおばあちゃんはゆっくりとこちらを振り返り

 

「それで?ちゃんと見つけたかい?」

 

と言った。

 

「え?」

 

なんの事を言っているのか分からなくて見つめるとおばあちゃんはふっと目を伏せた。

 

「ちゃんと見つけなくちゃダメだよ。後悔するからね。ここに来たってことは、それはとても・・・とっても大切なものなんだ。」

 

その様子があまりにも寂しそうで、苦しそうで、体の中にぐるぐると疑問は渦巻いているけれど口を開けてもそれらは外へと出なかった。

仕方なく真っ直ぐ口を噤んでギュッと服の裾を握りしめた。

 

おばあちゃんはゆっくりと動いて木の根元に「よっこらしょっ」という掛け声と共にちょこんと腰をかける。

再度合わせられた瞳には先程のような陰りはなくて、暖かく優しい視線が包み込むように私を見た。

 

「難しく考えることは無いよ。色々複雑に絡み合ってる。そりゃぁ、確かに必要な時もあるよ。けれどそれは後からへばりついてきたものだ。

迷った時。見失った時。それらは複雑になりすぎて私らの目を覆い隠しちまう。」

 

朗々と語られる言葉が、私の中に入ってくる。

真っ直ぐにけれど確実に。私の中に染み込むように。

 

「大切なのは1番奥。何もまとわりついていない最初の気持ち。

 

自分を誇りなさい。

 

貴女の代わりは誰にもなれない。人は皆、誰もが特別な存在なのだから。

 

貴女は、どうなりたいの?その為には何が必要?

 

貴女が貴女であることが、何よりも大切で大事なことよ。」

 

 

風が吹き、枝が揺れる。

チラチラと木漏れ日が踊っている。

暖かい光に包まれて、私の瞳からはポタポタと雫がおちる。

 

胸から湧き出した色んなものが、詰まって引っかかっていたものを全て押し出していく。

 

「相変わらず泣き虫ねぇ。それにうっかりさんだわ。」

 

そんな私を眺め、おばあちゃんはにこにこと微笑んでいる。

 

「あなたは考えることが好きだものね。昔からそう。だからあなたの見る世界が広がればきっと、いつか忘れてしまう事があるかもしれないと思っていたのよ。」

 

優しくて、暖かくて、包み込んでくれるような陽だまりのような瞳。

ふにゃりと笑う顔はどこかお茶目で、可愛らしい。

 

「でも、もう大丈夫よ。なんたって、あなたはーーー」

 

ザァァァァァァ。

強い風が吹き、目の前をいくつもの木の葉が覆っていく。

おばあちゃんはイタズラが成功した時のような顔をして小さく手を振っていた。

 

 

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パチリと目を開けて映るのは見慣れた天井。

身体を起こすと、ポタリと頬から雫がおちた。

 

乱雑に散らかった自分の部屋を見渡し、部屋の壁にポツンと飾られた1枚の絵を見る。

 

大きく、力強く存在している立派な木の絵。

 

生前にもらった祖母が色鉛筆で書いた絵。

どうしてこんな絵がかけるのかと尋ねた私に、祖母は

 

「頑張り屋さんのあなたの為に、特別な魔法をかけて書いたのよ。あなたが大切なものを忘れた時に助けてくれるわ。」

 

なんて少しふざけたように言っていたのを思い出す。

 

「ふふ。」

 

自然と口角が上がり、笑い声がもれる。

 

「本当に魔法使いみたいね。」

 

呟いて、そっと木の根元をなでる。

 

そして大きく息をひとつ吸い込み、思いっきり頬を叩いた。

 

「よし!!!」

 

バタバタと身支度を整えて、カバンを持ち玄関へと立つ。

 

「行ってきます!!!」

 

久々に晴れやかな気持ちで吐き出されたその声に、優しい声が応えてくれた気がした。

 


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【短編】雨上がり

 

青く澄み渡る空。白い雲。
煌々と輝く太陽が降り注ぐ、ジリジリとした熱。

目の前にはひらひらと踊るように動く黄色。


「君は相変わらず、おかしなことを言うね?」

くすくすと楽しげにそう言い放った彼女に少しムッとしてしまう。

「おかしいとか、先輩にだけは言われたくないんですけど。」

「だっておかしいもの。」

そんなこちらの様子が可笑しかったのか、先輩は上機嫌に裾をはためかせながら前を歩いた。
その後ろを着いていきながら、先輩の背中へと声をかける。

「おかしくないですよ。当然の疑問だと思いますけど。きっと先輩を見かけた全員が疑問に思ってますよ。なんであの人レインコートなんか着てるんだろうって。」

「あははははっ!!なんでって!!ふふ。」

再度ぶつけた疑問に先輩は耐えられないとばかりに笑った。
ひとしきり笑って笑って、やっと落ち着き一呼吸置いてから先輩はもう一度こちらに向き直る。

「レインコートを着る理由なんて、雨が降ってるからに決まってるじゃない。」

まっすぐ。強い視線が突き刺さる。
周囲の音がどこか遠くなった気がした。
スっと視線を空へ向ける。

「・・・・・・晴れてますよ?」

そうだ。
今日は朝から本当にいい天気で、今だってジリジリと太陽から放たれた熱に肌を焼かれている。
あまりにもまっすぐに言葉をぶつけて来たので、一瞬不安に思ってしまったが紛うことなき晴れである。

「降ってるよ。」

それでも先輩はそう答える。

「ザーザー。パラパラ。空から落ちてくる雫が、地面を、家を、木々を、私達を、打ちつけるために降ってきてる。」

まっすぐ見つめてくる先輩の瞳はとても力強い。

「・・・降ってるんですか?」

「うん。降ってるよ。」

なのに、なんだか先輩が消えてしまいそうで。

 


とても恐ろしくなった。

 

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理解できないものを目の前にした恐怖に、顔をひきつらせ走り去っていくあの子の背を見送った。
どんどんと小さくなっていくその姿に、先程まで楽しくて愉快で仕方なかった気持ちが急速に消えていく。

代わりに、不愉快な雨の音が強く鳴り響き、私の体を強く打ちつける。


「あめ、強くなった。」

ポツリとつぶやき、レインコートのフードを両手でぎゅっと押さえつけた。
濡れるのは嫌だ。

バチバチと強い音を立てて、雨粒が私を打ちつけるために降ってくる。
高い空から私に向かって一直線に。

「言わないほうが、良かったかな?」

口から漏れ出た言葉は笑ってしまうほどに弱々しく、強く降り注ぐ雨の音に消えていく。


ぐっと奥歯を噛み締め、足を前に進めようとしたその時

バサッ!!!

と大きな音と共に、視界が影に覆われる。


「え。」

 

「良かった。まだいた。」

驚き振り返ると、息を切らしたあの子が得意げな顔で笑っていた。

「雨降ってるならこっちの方がいいですよ。」

息がつまり、急速に視界が滲んでいく。
ポロリと雫が落ちるのと溜まっていた感情が口から溢れ出すのはほぼ同時だった。

今日は土砂降りだ。
レインコートも傘もしてるのに、私はずぶ濡れ。


でも

もう私に、レインコートはいらない。




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早起き出勤



目を開ける。

外はまだ暗い。

 

重たい体を起こして身支度をして、暖かいお茶漬けを食べてホッと一息。

 

残ったお湯で水筒にお茶を注ぎおにぎりと一緒にカバンへしまう。

 

上着にマフラー、マスクに手袋。

 

防寒対策をしっかりとして「よしっ!」とひとつ気合いを入れた。

その勢いのままに玄関を通り抜けると肌に冷たい空気が突き刺さる。

 

空は少し明るくなり始めている。

 

昼間とは違う静かで人気の少ない道を歩いていく。

お店はまだ軒並みシャッターが下りていた。

開いているのはコンビニくらいだ。

 

昼間の喧騒は全くなくて、見慣れた道をなんだか不思議な気持ちで進んでいく。

何時もとは違う様子の街並みをスキップしたくなるような心地で、新しい街の観光に来たようなワクワク感が湧き上がり自然と笑顔が溢れた。

 

早起きはあまり得意では無いけれど、こんな気分になれるのなら悪くない。

 

素敵な1日の始まりに、期待を込めて

いつもより空いている電車に乗り込んだ。


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